大曲をあらたに聴く13&14枚目

Disc31〜32
モンテヴェルディ:『聖母マリアの夕べの祈り』(全曲)
 コンラート・ユングヘーネル(指揮&リュート
 カントゥス・ケルン
 コンチェルト・パラティーノ

この作品の隠れた名盤として非常に高い評価を持つアルバム。ユングヘーネルと音楽学者カーターがこの録音で提案する解釈は「1人1パート」。そもそも王侯のために書かれた本作は合唱団を用いるようなものではなかった、という学説に拠っているのですが、そんな学説を現実に演奏できるのも、カントゥス・ケルンの素晴らしい実力ゆえのことでしょう。これまでの合唱の中で失われていた音のテクスチャがくっきりと浮かび上がり、マドリガーレ的な音楽に仕上がっています。

 今までこの曲は手持ちのガーディナー盤(ブリン・ターフェル入り)で聴いてきたのだけど、あれを木綿豆腐とするとこちらのカントゥス・ケルン盤は絹ごしの柔らかさ。鳴り響くのではなく、そよぐ音の薄絹。と私の耳は思いました。