- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/05/20
- メディア: 文庫
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いかにも恩田陸らしい「達者な」感じがちょっと癇に障りつつ*1、聡子が落命するシーンでは泣いてしまう、精神力が弱り切った中年女であるワタシを実感痛感。
追記:
きょう(7/6)の京都新聞朝刊に載っていた《歩み来て、未来へ - ニッポン近代考》というシリーズの第23回。恐山のイタコをとりあげていた。イタコのほとんどが70歳以上というなかで40歳の若いイタコさんが登場するのだが、彼女が最後のイタコになるのでは…と言われているらしい。
(...)イタコは明治後期、1900年前後に恐山に現れるようになったようだ。
当時、日本は日清・日露と大国に続けて戦いを挑み、勝利したが、駆り出された多くの人々の血が流された。信仰の山、恐山は死者の魂が集うとされてきた。イタコは死者を呼ぶ。死の気配が社会を広く覆っていったとき、両者が結びついたのは必然ともいえた。
だが、国家神道による一元的な宗教支配を目指す政府にとって、イタコや沖縄のユタなどの民間みこは、前近代的で民衆を惑わす存在だった。
当時の新聞には、イタコがインチキ神様として逮捕されたり、裁判にかけられたりしたという記事がよく出てくる。国家は刑罰権まで発動し、激しい弾圧を加えた。
恩田陸の《常野物語》シリーズは、特殊な能力を持ち、連綿と現代につづく一族の物語だ。常野(地名であり、「一族」の呼称でもある)の人々がその能力のゆえに、公の権力から弾圧されたり、スパイの疑いをかけられるエピソードが出てくる。『蒲公英草紙』は、《皆が二十世紀という新しい世紀に何かが変わるような期待を抱いて》いた、《にゅう・せんちゅりぃなるもの》のはじまる頃から第二次大戦の終結までの、はかない安らぎとそれを押し流していった暗く虚しい時代を描いていた。たまたまだけど、新聞記事と少し重なる気がしたのでメモ。
*1:基本的には、その達者な手つきでほどよくもてなされたいから読むこの人の本、ではあるのだが