ヒッチコック特集「めまい」「知りすぎていた男」

 両作とも、DVDがいろいろ出すぎてて、どれが何だかわかりません。

 両方に主演しているジェームズ・スチュワートは、ちょっとジョージ・クルーニーに似てる。温厚でいい人っていう感じを含めて。それだけに「めまい」で、真相を知って謎の女を締め上げる場面の逆上ぶりがかえって怖い。

 「知りすぎていた男」で妻を演じるドリス・デイ、私には何となく「歌手」というイメージしかなかったが、立派な女優さんだったんですね。子供がさらわれたことを知った主人公は、妻が取り乱すのを恐れてまず鎮静剤を飲むよう説得してから事実を話す。妻が泣き叫びながら寝台に倒れこむあたりの演技は迫力があった*1。いい人すぎて*2ボンクラ感すら漂う亭主(=ジェームズ・スチュワート)を差し置いて、鋭い観察眼と行動力を発揮するキャラクターにも好感。
 大詰めで、彼女がピアノを弾きながら唱う悲痛すぎる「ケ・セラ・セラ」と共に、カメラが大使館の建物内を探るようにだんだん一つの扉へ近づいていくところの、どきどきしそうな緊迫感がよかった。ロイヤル・アルバートホールで演奏されるベンジャミンカンタータ『時化』(<なぜにこんな題名?)も、なかなか面白い曲で魅力的。

*1:案の定、映画の後の解説で「この部分の演技でドリス・デイヒッチコックに認められた」ようなことを言ってました

*2:でも本作にも、自分たちとの約束を反故にしておきながら同じレストランに来ている謎のフランス男を見かけて、憤慨する妻を最初はなだめていたのに、急に激怒し出すという場面もあって、いったんキレるとキレ過ぎるという性格設定なのか…