たちあがる人々

大聖堂-果てしなき世界(上) (ソフトバンク文庫)

大聖堂-果てしなき世界(上) (ソフトバンク文庫)

 あの震災が起きる前から読み始めていたこの本。あいだに他の本を読んでいたりして、しばらくぶりに再開したら、木造の橋が崩れて街の人々多数が川に転落し、亡くなったり大怪我を負ったりする悲惨な事故の場面があった。

あそこにいる人たちが、とマーティンはいいたかった。ぼくたちを育ててくれた人も、ぼくたちに優しくしてくれた女性も、ぼくたちが嫌っていた男性も、ぼくたちに憧れていた子供たちも、母と息子も、叔父と姪も、無慈悲な親方も、断じて許せない敵も、愛の最中にいる恋人たちも、みな死んでしまおうとしているんだ。しかし、言葉にならなかった。(強調部分は傍点)


 橋をなくしたことで、キングズブリッジの町は羊毛をはじめとする商取引の市場をも失いかねず、存亡の危機に立たされる。いかにして橋を再建し町を再生させるのか、商人たち修道士たちのさまざまな思惑がぶつかる。いっぽうこの悲劇が、若い建築徒弟であるマーティンにとっては実力を示す機会ともなる。災害と復興を背景に、愛と憎しみ、情熱と野望が交錯する、濃〜いドラマが続きそう。