にわか医療マニア

 昨年思いがけない病気に罹って以来、時間の無駄遣いと思いながらついつい、ネットで検索しては医療機関のサイトやら、自分と同じ病気の人の体験記やら、果ては同じ診療科・治療法を専門にしておられるお医者様のブログやらをぼんやり閲覧してしまう。ほんとは自分の主治医がとても好きなんだけど、これ以上近づきようが無いので、代償行動として周辺情報を漁ってしまうというわけ。

 読書のほうも、従来どおり小説やエッセイはもちろん読み続けているのだけど(なかなか進まない)、上記のようなサイト経由で知った本にこれまたついつい興味を惹かれてしまい…

 本日読了した本:里見 清一『医者と患者のコミュニケーション論』 (新潮新書)

医者と患者のコミュニケーション論 (新潮新書)

医者と患者のコミュニケーション論 (新潮新書)


 こちらのブログで紹介されていた本。その中で、

自分の担当の医師、日ごろ怖そうに見えてなかなか会話出来ない医師が
心の中でどんなことを考えているかを知る手がかりとなる本

と書いてあったのに好奇心を刺激され(実際の自分の主治医の「心の中」を知りたいかどうかは自分でもわからない)、買ってしまった。
 著者はがんの治療を専門とする医師で、深刻な病気に悩み苦しむ患者さんと関わってきた長年の経験から導き出した、独自のコミュニケーション論が説かれている。現在の私のような、当面は命に関わるわけではない、ゆる〜い病状で診てもらっている慢性(?)患者には必ずしも当てはまらない内容かもしれない。大病には決して罹りたくないが、治療方針をめぐって患者さんと怒鳴り合いになったことがあるという昔話など、そこまで濃密な医師と患者の関係を少し羨ましく感じる箇所も幾つかあった。最後の辺り、いよいよ万策尽きた時に患者に対して医師ができることは何か、という辛い局面を語る章は、読みながら泣けてしまった。とはいえ、私も実際に患者としてこの先生に出会ったら「憎たらしい医者やな…」と腹を立てるのかも。


 次に読むつもりの本:石黒 芳紀『手術室からの警鐘 (最先端医療の現場から)』 (平凡社)

手術室からの警鐘 (最先端医療の現場から)

手術室からの警鐘 (最先端医療の現場から)

 心筋梗塞を経験したかたのブログ*1を拝見していたら、どうやら著者とご友人らしくこの本を紹介されていたので、読むことにした。著者は麻酔科のお医者様。「手術をする外科医の腕の善し悪しを最も客観的な立場から見ているのが麻酔医である」というような話は、他の本(外科医が書かれたエッセイ)でもたまたま読んで、ふーん、と興味を持っていたので。きっと面白いはず。

 
 ほんとは小説をもっとガンガン読み進めたいんだけどね……

居心地の悪い部屋 (河出文庫 キ 4-1)

居心地の悪い部屋 (河出文庫 キ 4-1)

*1:ちなみにこちらのブログ主さんはご自分の病気についてとても詳しくご存じで検査結果の数値なども子細に理解・検討されている。同じ病気なのに、なーんにも知らないままされるがまま忘れるがままになっている自分がちょっと恥ずかしい。ほかにも、だいたい闘病記・体験記をウェブに載せている人はすごく真面目で研究熱心だし記憶力が優秀な人ばかりだ…

2度目の秋

2年前のちょうど今ごろ、父が入院した時に、私は若松英輔さんの本を読んでいた。

井筒俊彦―叡知の哲学

井筒俊彦―叡知の哲学



その同じ病棟で、こんどは自分がこの本を読みながら過ごし、そして私のほうは生きて家へ帰る。

暴力階級とは何か: 情勢下の政治哲学2011-2015

暴力階級とは何か: 情勢下の政治哲学2011-2015


どちらもその前から読みかけていた本で、病気や入院と関係して選んだわけではない。生きることとか身体とか自由とかについて考えさせるような重めの本になってしまったのは偶然である。


廣瀬純さんには前から関心があったけどなかなか読む勇気が出なかった。この最新刊は、雑誌連載をまとめたもので比較的とっつきやすそうに思えたし、装幀・造本のオシャレさにも惹かれた。著者の考えの大事な部分が、連載エッセイ・鼎談・往復メールの形で繰り返し展開されるので、だんだんその思考に慣れていくことができ*1、ひさびさに「ここに書いてあること、わかる! 全然わからんけど、何となくわかる!」という興奮を味わった。他の著作もできれば少し読んでみたい。…が、じぶんの残り時間というものに改めて焦りを感じずにはいられない。

*1:愚かさと共にあるしかないこの世界で生きること、など

高島屋幻想博物館

  • 高島屋幻想博物館 (8月20日(水) → 26日(火) 京都高島屋 美術画廊)

いつの世も老若男女の心を捉え興味を抱かせる人気の「博物館」という形を借り、摩訶不思議で耽美な世界を、平面・立体作家27人のアート作品で表現しました。

[出品作家]
青木 美歌 秋永 邦洋 伊 多 呂
井上 裕起 内林 武史 江本 創
大森 暁生 小俣 英彦 金子 富之
川端健太郎 北川 健次 小松 宏誠
鈴木 亘彦 住吉 明子 田嶋 徹
田中 武 田畑奈央人 出和 絵理
豊海 健太 原 真一 フジイフランソワ
藤浪理恵子 松崎 和実 松本 潮里
向山 裕 森 淳一 吉田 有紀

【参考リンク】田中武ブログ グループ展「高島屋幻想博物館展」、 グループ展「高島屋幻想博物館展」その2

梅雨明け

 昨日の午後、京都市美術館でバルテュス展をみて、外へ出ようとしたらにわか雨が降っているところだった。

 しばらくロビー*1で雨宿りしながら、同行者に向かって「これが梅雨の終わりかもしれへんねえ」と言っていたのが、やっぱり当たりました。

*1:と言えるほどのスペースがないのが、あの美術館の困った点

犬の命日に「抹茶ぶちパウンド」


   〜〜〜6/29に書いています〜〜〜


 毎年、犬の命日である6月30日には焼き菓子を作ろうと心がけてはいるのですが、いま検索してみたら前回アップしたのは2年前。去年はすっかり失念していたのでしょうか(自分問い)。どうも去年はなにかと油断・慢心していて、結果的にバチが当たった、そういう年だったようです。


 そんなわけで、今年は深く反省しつつ、またまたお手軽なものを前日に大急ぎで……



てっぺんがかなり焦げた…そしてスロープになってるorz


でも中身はまずまず無事です。マーブルというよりは、犬のぶちっぽい柄



しっとりきめ細かく焼き上がりました。抹茶の緑が濃い理由は後述(^^;)ゞ



 参考にさせて頂いたレシピは、クックパッドのこちら:
Cpicon 抹茶マーブルパウンドケーキ by KaoRi☆★☆


 ただし、材料を中途半端に残すまいという都合上、バターや粉・砂糖は25%増量、抹茶に至ってはほぼ倍量投入という乱暴な改変バージョンです。
 でもレシピに記載されている通り、簡単な方法で適度にふんわりしっとりした生地に焼き上がったので大満足。やっぱりわんこのおかげね。大好きだったお父さんもそっちへ行ってそろそろ9ヵ月、もう天国で一緒に遊んでるかな〜

いつもそこにいた


 まだ読み始めてもいないけれど、[帯写真提供:東京電力]という装幀からも不穏な雰囲気が伝わってくる奥泉光『東京自叙伝』。


東京自叙伝

東京自叙伝


 本の内容にピッタリではないか?!と思われるチラシがちょうど手元にあったので、ひさびさの「ブックカバー」。ヤマガミユキヒロさんの《東京駅の眺望》という作品の一部分が印刷されています。真ん中に見える道路標識には[東京駅中央口]の文字が。



 A4二つ折り(広げるとA3)サイズのチラシなので、隣に並んでいた横内賢太郎さんの《adapting form-em》が裏表紙側へ回って、不思議な雰囲気に…




 こちら↓の展覧会のときのチラシだったみたい。両作品とも画像が見られます。

日本の創作人形作家たち展


 この美術館は、長い通路の奥に展示室の入り口があり、手前の受付で入場券を切ってもらったら、磨りガラス状の(中の見えない)自動ドアを通って入る仕組みになっている。
 平日の仕事帰り夜7時に到着、静まりかえった通路をいそいで抜け、「ごゆっくりご覧くださいませ」の声に送られて展示室に足を踏み入れたら、前方に客はひとりも見あたらない。背後で自動ドアが ぴたり と閉じ、そこには*1黒っぽい壁を背景に、ぐるりと人形たちだけが部屋を囲むように並んでいた。
 3分もしないうちに、若い男女二人連れ、年配の女性、とぽつりぽつりお客さんがやってきて、すぐに普通の空気が戻ってきたのだけど、あの瞬間はちょっと怖かった。


 既知の好きな作家として森小夜子・山口景子、そして今回はじめて知った作家として尾島佳子・中村弥麻紀の人形が気に入ったので、とりあえずメモ。

*1:私の記憶が確かならば