全部が華麗に嘘くさい

- 作者: 奥泉光
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2018/02/07
- メディア: 単行本
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NHK Eテレの『100分de名著』という番組がある。今年の3月には原武史が松本清張の主要作を紹介するという内容だったので、清張作品にはほとんど興味の無かった私もテキストも買って視聴してみた。取り上げられていたのは『点と線』『砂の器』『昭和史発掘』『神々の乱心』の4作品だった。その後、この『雪の階』を読み始めてみたら、『春の雪』路線かしらと思わせつつ、先述の4作品がぜんぶブッ刺してあるみたいな、とんでもない小説だった。
私はこの順で読んだので、まるで原武史のテキストに沿って小説が書いてあるような錯覚をしたが、考えてみたら雑誌に連載されていたのは昨年秋までなのだから、むしろこの小説にインスパイアされて原武史の『100分de名著』が構想された可能性のほうがある。
原武史がやっぱりこの小説の書評を書いているらしいんだけど、残念ながら(笑)有料記事。図書館で探してみようか。
www.asahi.com
読み終えられないうちに参加
■人文研アカデミー2018 連続セミナー「〈68年5月〉と私たち」ー68年5月と現在、政治と思想を往還する
—佐藤嘉幸(筑波大学准教授)・廣瀬純(龍谷大学経営学部教授)「ドゥルーズ=ガタリと68年5月──佐藤・廣瀬著『三つの革命』をめぐって」
できれば読んでから出席したくてがんばったものの、第二部にさしかかったところで当日に…しかし読み続ける(そして何としても「結論」にたどり着く、という)気力を得ることができた。ここから後のほうが読みやすくなりそうだし。
佐藤先生は講義っていう感じ、それに対して廣瀬先生はやっぱり独演会スタイル(?)でワクワクというかニヤニヤしてしまった。
この「現在」の向こうに、はたして希望があるのかというともうどうかわからないけれど、我々は(私のような者ですら)読み続けるしかないわね。
夏の小宇宙
映画 『モリのいる場所』を観てきた。
ほとんど予備知識無く、山崎努主演という点にだけ惹かれて出かけた。だいたい日本の映画やドラマは苦手(芝居がクサくて学芸会を見せられているみたいで、恥ずかしさに居たたまれなくなる)でほとんど観ないのだが、この作品は脇役に至るまで演技がなかなか自然で厭味が少なかった。とくにカメラマン&助手、この辺りはきっと芝居がわざとらしいに違いない…と出てきた瞬間に思ったのだがそんなことはなくてよかった。
冒頭の、庭をじーっとカメラが移動していくあいだに、むかし観た(数少ない日本映画のひとつ。内容はほとんど憶えていない)『ロビンソンの庭』を思い出していた。モリの庭はどのくらいの規模なのか、周りはいったいどうなっているのか、なかなかわからない仕掛けになっているが、最後までみると、全く似ていないと思われた『ロビンソンの庭』の庭、にやっぱり案外似ていたんじゃないかという気がしてくる。
“仙人とも呼ばれたという老画家”にしては顔肌に艶がありすぎ眼光が強すぎるぜ山崎努…と思ったが、実際の熊谷守一の顔写真を見たらなかなかの男前で、91歳にしてぜんぜん枯れた感じがしないので、あれでちょうど良かったのかもしれない。
山崎モリがガンダルフにそっくりなのは、監督自身が『ロード・オブ・ザ・リング』を狙ったと語っているので意図的なものなのだろうが、それ以外にも『ホビット』に出てくるドワーフの宴会を思わせる場面もあるし、なんといってもあの俳優が最後にはエルフとして…さすがに驚きました。
ひさしぶりに来た
人文研アカデミー2018 連続セミナー「〈68年5月〉と私たち」ー68年5月と現在、政治と思想を往還する
5回シリーズなれど、平日なので聴きたいやつ2回にしぼって参加の予定。この日はこちらのお二方:
上尾真道(京大人文研研究員)「68年5月と精神医療制度改革のうねり」
立木康介(京大人文研准教授)「精神分析の68年5月──「ラカン派」の内と外」
この日をはさんで、少しだけ立木先生の『露出せよ、と現代文明は言う』を読み返した。これはとても親しみやすい本だったのでまた読めるかも → どんどん寝床の横に積み上がる本が増えていく

- 作者: 立木康介
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2013/11/21
- メディア: 単行本
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質疑応答の時間に、今回のセミナー内容よりも自説を延々述べたい感じのおじいさんが登場(ずいぶん昔にも聞いた気がするのでたぶん常連さん)したのだが、先生たちのかわしテクニックが洗練を極めていて感心してしまった。というか、私が思いこんでいるよりも、意外に的外れではない発言だったのかもしれない
新緑に密やかな笑み
先週観てきた展覧会ですが記録のため
MIHO MUSEUM
3月10日(土) - 6月3日(日)
猿楽と面―大和・近江および白山の周辺から―
あの、それ自体が深山幽谷に架かった幻の能舞台みたいなミホミュージアムのほの暗い展示室に、お面がずらっと並んでいるようすを想像しただけでちょっと怖くないですか?! 開館時間中はまだしも、夜中ももしかして警備員さんは巡回したりするのかしら、どんだけ気味悪いだろう…と勝手に盛り上がりながら訪ねました。
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