おまえなんかいってしまえばいい

穂村弘『もうおうちへかえりましょう』 読了。


「この世界からはみ出し」ているという痛切な自覚。


「日曜日の朝、目が覚めた瞬間に、ああ、明日はもう会社なんだ、と思って胸の奥が重い」ほど、未来の奴隷になってしまう体質。


 穂村弘の自画像はどれもこれも私に似すぎていて、読むのが辛い時がしばしばある。同世代だということも無関係ではないだろう。


 彼を知った最初のきっかけは新聞に載ったエッセイで(そんなに自虐的?ではなくほのぼのしたもの)、ただ何となく読んで気に入ったにすぎなかった。続いて歌集『シンジケート』を読み、さらに好きになった。でもまさか後になってこれほど"自分に似ている"とショックを受けることになるとは、思いもよらなかった。

 何年か経って『世界音痴』が出たときは、喜んですぐに買って読んだ。そして、"こんなに痛いなんて、読まないほうが良かったのか・・・"と後悔さえした。なのにまた『もうおうちへかえりましょう』を読んでイテテテと苦悶している自分 → ただのバカなんだな、としみじみ自覚。

 噂では穂村さんもケッコンしたりとか「現実入門」してるらしい。いーち脱ーけた、というわけか。こちらは相変わらず「はみ出し」たままだ。
 
 穂村弘という腹立たしい現実を忘れてしまえれば、と思う。そしてきらきらした歌だけを愛好していられれば良かったのに、と思う。