居そうで怖い愛国者


 顔が破けそうなほどのスマイル、飛行機好きで自家用ジェットも所有、某新興宗教の熱心な信者・・・と、トム・クルーズと意外な共通項が幾つもある*1John Travolta
 この人の悪役は好きなのだけど、『バトルフィールド・アース』ハラホロヒレハレだった(けっきょく途中までしか観ていない)記憶が私を少し不安にさせるのだった。
 しかし、それは杞憂。もちろんトラヴォルタだけでなく、Hugh Jackmanや、Don Cheadleが目当てだったのだが、そこらへんも含めて面白かった。


 『レザボア・ドッグス』を思い出させるお説拝聴シーンから始まって、オープニングがいきなり事件のクライマックス付近。そこから時間が逆戻りする展開に、ぐっと気持ちを掴まれる。
 また、スタンリーがガブリエルの隠れ家のワインセラーで死体(?)を発見してギョギョ!となった直後(<地上波放映分なのでオリジナル通りかは不明ですが)にド派手なカーチェイスが展開されるため、あの死体のことをこちらがつい忘れてしまったのが、後になって効いてきたので「やられたな」と思った。
 

 筋書きの面白さ、トリックやアクションで語られることの多そうな映画だけど、全体の色合いとか輪郭、冒頭の爆発シーンの見せ方など、ちょっと風変わりなタッチが感じられて、目を楽しませてもくれた。

 
 それと、2001年作品ということは(最近なにを観てもこんな風にしか考えられないのもいやなものですが・・・)9.11以前に発想され作られているわけで、それを思うと、純然たる娯楽映画のはずが怖いところを衝いている作品という気もする。
 その最たるものがガブリエルの「もし一人の罪の無い子供を殺せば、世界中の病人を治療できるとしたら、殺せるか?(...)それが正義だ」というセリフで、これは合衆国の論理そのものでせう。

 
 ラストでスタンリーはガブリエルの仕掛けたトリックに気づくけれども、とにかく娘さえ手元に戻ればもうえーやん。ということで真相は闇の中。けっきょく両方から騙されたままになってしまうドン・チードル的にはどうよ?という気もします。
 それとSam Shepardが思いのほか老けてて、まるでウィレム・デフォーかと思うような悪人フェイスだったのがちょっとショック。あの人いつからあんな顔に?

*1:アクターズ・ステュディオのインタビュー番組でも、この2人は2時間(=通常の2倍)しゃべりまくっていた。