別れの季節


 図書館通いのために用意しているノートがある。小型で厚めの大学ノート(ツバメノート謹製)で、新聞などに本に関して気になる記事や広告が載ると、切り抜いてここに貼っておく。たまに図書館でメモするのに利用したりもするけど、基本的にスクラップブック状態なので、一冊使い終わる頃には元の厚さの倍くらいに膨れあがってしまう。


 先日、4冊目がとうとういっぱいになったので、新しいノートをおろした。表紙に好みの絵画のコピーなどを貼って、汚れ防止に全体を粘着ビニールシートで覆う(ちょうど図書館の本と同じように)。こうしておくと長い間使ってもあまりボロボロにならずに済む。


 1993年に使い始めた1冊目の冒頭ページには、中井英夫の死亡記事と追悼記事が貼ってある。2冊目には、真ん中辺りだけど後藤明生ポール・ボウルズの追悼記事。3冊目の最初は保坂和志が書いた田中小実昌の追悼文。4冊目は岸田理生の死亡記事から始まって、途中には種村季弘エルヴィン・ジョーンズ(←この人だけ図書館とあまり関係なさそうですね)の死に関する記事が貼ってある。本の選択とあまり関係のない、死亡記事の類はけっして集めているわけではなく、特に気になる人のものだけを残しているので、ノート1冊にせいぜい数人というところだ。


 5冊目を用意したとたんに、塚本邦雄、そして倉橋由美子の死の知らせが届いた。最初の見開きに、スティック糊でていねいに塚本邦雄の死亡記事を貼り付ける。なぜだかだんだん、最初のページはたいてい死んだ人の記事ということになってきた。どうせ本なんて死んだ人たちの世界のようなものなのだから、それでもいいのだけれど。