輩出、するのかされるのか

 「お持たせ」問題と同様、ことばに関して私などが疑問を持つような事柄については、どこかの誰かがとっくに気づき調べ指摘しておられる場合がほとんどだろう。今回もそうだった。


 まずYAHOO辞書にて検索の結果ー

  • はい‐しゅつ【輩出】[名](スル)すぐれた人物が続いて世に出ること。「各界に人材を―している名門校」(大辞泉
  • はいしゅつ【輩出】(名) スル すぐれた人物が続々と世に出ること。・門下から人材が―する(大辞林

 『大辞泉』(小学館)のほうが「〜輩出する」、『大辞林』(三省堂)は「〜輩出する」。


 もう何年も前(ネットで検索ということを思いつかなかったわけだからそれなりに昔)、両方見かけるこの用法のいったいどちらが正しいのか悩んで、しばらく新聞などでこの表現を見かけるたびに切り抜きを貯めていた時期があった。しかしこういうことは得てして意識し出すとなかなか巡り合わない(--;)ゞもので、思ったほど用例を集めることが出来ず、そのうち諦めて切り抜きも処分してしまった。その時点では、どっちが圧倒的に多いとも言えない結果だったと記憶している。しかし正直言うと、自分の語感としては、「〜輩出する」が正しいと思っていたのに「〜が輩出する」も結構あるなぁ・・という気持ちだったのだ。

 ちなみに、例のごとくGoogleで検索してみると

  • "を輩出"→約1,110,000 件
  • "が輩出"→約 141,000 件

で、「〜輩出」のほうが圧倒的に多い。


 しかし、以下のページではこのように解説されている:

当時(引用者注:1926年)「輩出」の前につく助詞といえば「が」でしたが、現代では「を」が多くなっています。(...)「日国」でも「が輩出」と「を輩出」が混在しております。

 もともとは「〜が輩出する」と使われていたものが、最近になって混在さらには逆転しつつある?という流れであるらしい。
 引用文の中に“「日国」でも・・”とあるのは、小学館日本国語大辞典』に載っている諸項目の解説文にも、両方の用法が混在していることを指している。このことから、少なくとも小学館日本国語大辞典』(第二版は2000年刊行)の立場としては、どちらの用法が正しいという判断は出していないと考えられる。また、最初に挙げたように「〜を輩出」の用例文を載せている『大辞泉』も、小学館の刊行物である。
 Google検索結果を信用するならば趨勢はもはや歴然としている。しつこいようだが「おもたせ」問題と同様(?)、この流れは止まらないだろう。そもそも私が「〜輩出」のほうを正しい用法と思って育ってしまったのも、30〜40年前には既にそちらのほうが優勢だったからと考えられる。ただ、「〜が輩出」のほうが古くからある用法だったということだけはこの機会に憶えておこうと思い、今日の記事を書きました。



 「輩出」問題について考えを述べておられるブログ記事↓。長年死蔵していた今回のネタを書くきっかけとなりました。

 最近のエントリにおいては、「敬愛なるベートーヴェン」「龍が如く」も取り上げておられ、ちょっとホッとさせていただきました。

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