書物・愛

 オンライン書店で注文したとしても、最終的には確固たる物体としての書籍が届くのだから同じこと・・のはずなのに、リアル書店で本を買うときにはなにかひそかな興奮がともなうのはなぜなんだろう。それも、いつも必ず買うと決めている読み慣れた作家の本などではなく、難しくてホントに読むかどうかわからないまま思い切って買ってみる(ちょっと値段も高めだったりする)本*1なんかを買うときに、その興奮はやって来る。私の手が触れるはずではなかったかもしれない未知の皮膚に、アクシデントのように触れてみる瞬間。こちらが選んで“所有”して踏み込んだつもりだったのに、いつのまにか絡めとられ入りこまれたような気もする、きわどい邂逅…

 さいきんでは、オンライン書店で買えばポイントも付くし…というわけで、どこの書店でも見つかりそうな新刊文庫本なんかも、まとめてネットで注文することが増えた。この本も、いつかそんな機会に注文することにしておくかなぁと思っていたのだが、きょう立ち寄った書店で姿をみたとたんに、欲しくなってしまった。

どちらでもいい (ハヤカワepi文庫)

どちらでもいい (ハヤカワepi文庫)

 アゴタ・クリストフの本は初めてではないし、これは文庫本だから値段の高さに興奮(!)することもないのだけど、epi文庫独特のほっそりしたシルエットと表紙(カバー)の色あいに心ひかれた。そもそも『悪童日記』三部作をepi文庫で読んだからといって、これも読まねばならぬ義理はないし、買おうかどうか、まさに「どちらでもいい」程度に思っていた本だったが、店頭で実物を眼にしたことが私をこの本へ引き寄せてくれた。
 本との出会いには、微かにエロティックな力のはたらくこんな瞬間があるのだ。ベタな喩えをするなら、オンライン書店での買い物は結婚情報サービスを介したお見合いていうところですか?もっというならピクチャー・ブライドとか。それもいいかもしれないけど、やっぱりときには街角での運命的な出会いを夢見てみたいの。
 
 ついでにこれも買った

*1:そう、たとえば「みすず書房」の本のように。…いや、ほとんど買ったことは無いんですけどネ。