湖岸の風に吹かれて

 絲紫野工房の草木染め作品展を見に行った。会場の蘆花浅水荘は、日本画家の山本春挙が、師匠と両親を供養するために記恩寺というお堂を含めて建てた別邸。ふだんは見学するのに予約が必要だが、今回の展示中は出入り自由だというのでこれはチャンス!と思い、出かけることに。

 蘆花浅水荘網代天井のお茶室や竹尽くしの書斎、隠し部屋のような小さな書き物スペースなど遊び心と個性が細部に感じられる建物。かつては庭先がそのまま琵琶湖の砂浜につながっていたという庭は、いまは幹線道路にさえぎられて眺めも変わったらしいが、それでも湖面から吹いてくる風が、広々と起伏する庭に面した縁側から取り入れられて爽やかだった。
 絲紫野工房は音楽劇の衣装も手がけており、万葉時代をテーマとした作品が幾つも並んでいた。和の色と質感に、歴史ある土地・大津から生まれたという手応えがしっかりとあるような気がした。

 暑すぎずサラッとしたお天気だったので、帰りは、釣り人で賑わう湖岸の遊歩道ぞいに膳所方面へ散策。わりと風が強く、空が明るく暗くなるのにつれて湖水の色も青と灰のあいだで揺れ動くのを眺めながら、いっぱい歩いた。