スイス国民的画家と御所人形を掛け持ち鑑賞


《日本ではあまり知られていませんが、国民的画家として本国の人々に親しまれ、その作品はスイス国内の多くの美術館などに所蔵されています。》という説明から、やや通俗で平板なイメージを抱いて観に行ったのだが、実際に眼にした作品は陰翳と深みをもち、あるものはドラマチックでもあった。
 老人と孫の団らんや、一心に針仕事をしたり勉強に取り組む子どもの姿など、一瞬を切り取ったなかにあらゆる生の時間が凝縮されたような重さも感じた。おおむね質素で静かな情景のなかにも「希望」を感じさせる絵が多い中で、画家自身の幼い息子が死の床に伏した姿を描いたものには胸を打たれた。また、特に私の印象に残った「赤ずきん」と題された作品は、お使い帰りだろうかパンと牛乳瓶?を手にした少女がこちらを見つめている絵なのだが、背景の淡い光と思慮深そうな少女の瞳をみていると、何かこの少女のその後の長い人生の結末まで見せられてしまったような、不思議な気持ちすら湧き起こってきた。

参考リンク:http://www.fujitv.co.jp/event/art-net/go/529.html

  • 丸平文庫第三回「丸平の御所人形展」(丸平文庫

 「市松人形」の回もぜひ観に行きたかったがかなわず、「御所人形」を取り上げられた今回、初めて参加できた。
 丸平大木人形店の歴代が制作および収集した人形を、時代や傾向ごとに展示。詳しい解説(へぇ〜っという裏話含む)を聞きながら、ふだん見ることのできない、古き良き時代のたっぷりとして奔放なお人形たちを眺めるぜいたくなひととき。御所人形といえば一番に思い浮かべる、白くてまるまるしたすっぱだかの赤ちゃん型お人形も可愛らしいのだが、見立て物というのか、能と歌舞伎の「竹生島」を題材にした大きな二揃いや、舞楽の衣装をまとったお人形たちが特に気に入った。
 かつてさる名家に納めた品が売り立てに出され、巡りめぐって丸平さんに戻ってきたという、「於福さん」たちがお花見遊びをしている趣向のお人形は、もとは二十数体揃えなのだが現在どうしても数体しか見つかっていないとのこと。それぞれに異なる美しい裾模様を着て、隠れ鬼など楽しげに遊ぶおふくさんたち、あれがコンプリートされたらどんなに華やかで可愛らしいことかしら、と夢想してしまうのだった。