図書館本2冊を読了。どちらも予想よりずっと面白くて得した、得した。
工藤庸子『宗教vs.国家 フランス〈政教分離〉と市民の誕生』(講談社現代新書)
- 作者: 工藤庸子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/01/19
- メディア: 新書
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軍や警察を動員してまで教室から十字架をとりはずす衝撃的な光景を、20世紀初頭に目撃した人たちが最近まで存命であり、その人たちから体験話をじかに聞かされた世代が今でもたくさんいることを指摘して、著者は
イスラームのスカーフを教室のなかに入れることはできないと主張するフランス人の心性は、自分たちは十字架を教室から運び出したという記憶によって、今も養われているのではないか。少なくともその記憶が、スカーフの排除は政治的には正しい(原文では傍点)という実感をささえているのではないかと思われる。
と書いている。歴史の中の記憶や象徴というものを考えさせられて興味深い指摘。しかしこの部分を含め本書を読んで私は、それならばなおのこと、絶大な[財]力を持つ組織であるカトリックと、少数派にすぎないイスラム、どこから見てもキリスト教のシンボルだろう十字架と、一般的装身具とどう見分けられるというのか今ひとつわからないスカーフ*1とを並列に考えるのは私にはキツいなぁ、という感想を持った(もちろんここで著者はスカーフ排除の是非を論じてはいない)。
黒田泰三『思いっきり味わいつくす伴大納言絵巻』 (小学館アートセレクション)
- 作者: 黒田泰三
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2002/04
- メディア: 単行本
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*1:同じスカーフでも、着けてる人の肌や髪の色で違う受け取られ方をしてるんじゃないかという疑い。そして、日常的に身につけている人にとっては、スカーフを取れと言われることは衣服の一部を脱げと言われるのと同じような難題であろう、まして十字架とは異なりそれは「女性」にのみ属するイシューだ (ときおり話題になる、高校生の制服に用いられる朝鮮の民族服と同様に)というところに、私はなんともいえないしんどさを感じる。著者はこの本のなかで宗教と性差にも言及しているが、私には難しくて頭が未整理。