青春ブリテン縦断

ローズマリ・サトクリフ『銀の枝』(岩波少年文庫) 読了。

銀の枝 (岩波少年文庫)

銀の枝 (岩波少年文庫)

 四部作の2つめ。ローマの属州の一つであるブリテン島で、勝手に皇帝を名乗って独立宣言(?)してしまったカロウシウスという人物が、肯定的に描かれている。たとえばここの記述などを読んだだけだと、「わるもの」という印象になってしまうのだけど、本作の主人公たち(従兄弟どうしの青年2人)はまっすぐにカロウシウスへの忠誠を誓い、命をかけて彼の仇を討つ。
 カロウシウスを暗殺して“皇帝”の座におさまったアレクトゥスに反感を抱く一派は、ひそかに連絡網を作り上げて、ブリテンから大陸へ人や情報を送り出し続ける。何げない料理屋が中継所になっていたりして、その地下組織の描写がスリリングでどきどきする。
 第1作でひそかに地中に埋められた第九軍団の旗印であるワシが、子孫のひとりの手で偶然見出される。秘められたはずのいきさつを子孫がテキパキと理解するあたり、ちょっと察しがよすぎるというか都合のいい展開(笑)のような気はするが、つながっていくという感覚は心地よい。
 本作にもイヌは登場するけれど、付けシッポをさげた“人間犬”でした。でもすごくイヌっぽいのはどうしたことか。