アフター&アフター&アフター

 1893年のロンドン。ついにタイムマシンを完成させたH.G.ウェルズは、ある夜、友人たちを招いてお披露目をする。しかしそこに集まったうちの一人、外科医スティーヴンソンが実はあの世間を騒がせている“切り裂きジャック”だった。捜査の手が及んだことを察知して、スティーヴンソンはウェルズのタイムマシンを勝手に使って未来へ高飛びしてしまう。兇悪殺人犯を野放しにするわけにはいかない。正義感と責任感に駆られたウェルズ自身も、“切り裂きジャック”を追って1979年のサンフランシスコへ・・・


 じつはこの作品、20年以上前に(今は亡き梅田東映会館で)SF映画のオールナイト大会(?)があった時に、『ブレードランナー』のついでに何となく観たうちの一本。マルコム・マクダウェルが出ていたこと以外ほとんど忘れ去っていたのだが、たしか4本立て上映だったなかで他の2本はもはや何を観たのかすら憶えていないことを考えると、私の場合これはまだしも記憶に残っているほうだと言える。それはともかく、やっとビデオで再会。


 あのM.マクダウェルがお堅いヴィクトリアン紳士をやってるというのがツボなのだろう。きちんと似合っているのがおかしい。『オレンジ』は別格としても、後年の彼は冷酷なマッド・サイエンティストとか、やはりちょっと癖のきついキャラクターで見かけることが多いと思うし。そしてその古くさい紳士が、70年代のアメリカの大都市で働く女性に出会って恋をすることになるのだけど、今となってはその70年代の進歩的なキャリア女性すら古めかしい感じにしか見えない(というか、これは演じるメアリ・スティンバーゲンの持ち味かもしれないけれど)ので、二重のアナクロニズムに、だんだん不思議な気持ちがしてくる。


 1979年に現れた“切り裂きジャック”の気味悪い佇まいが、髪形とかなんとなくあの『ノー・カントリー』の殺し屋に似ているような気がして、まさか『タイム・アフター・タイム』にヒントを得た…わけではないだろうけれど。