おもむきある皺

 また、本からの引用小ネタですみません。

中世の秋の画家たち (講談社学術文庫)

中世の秋の画家たち (講談社学術文庫)

 半分以上読んだところで長らく放置してあった本を再開していますが、そのなかに収録されている、ヒエロニムス・ボッスの肖像といわれるもの:

 一瞬、緒形拳さんに見えてしまいました(私だけ?)。


 ところで、この挿絵のすぐ右あたりに記述されているのは、ボッスが所属していたとされる「聖母友の会」という組織のこと:

「聖母友の会」への入会は1486年から87年にかけての年度の名簿で確認され、1488年1月の最初の月曜日、かれは同会恒例の「白鳥の宴」に出席している。すなわち正会員となったことの証である。同年7月には、町の広場の近く、「半分木造りの」かれの居宅で、今度はかれが主人役をつとめて、「白鳥の宴」が催された。白鳥の丸焼きが必ず宴卓に供されるところからこの名称があり、会の紋章にしてからが白鳥の図柄であった。(同書291ページ)

 「白鳥の丸焼き」といえば、『カルミナ・ブラーナ』の歌に出てきたような。Wikipediaによれば、『カルミナ・ブラーナ』の歌詞の原型は《11世紀から13世紀の間に書かれたと推測され》ているそうだから、中世ヨーロッパではよく食べられたものなのかしら。もっとも、ボッスの時代には(ことさら会の象徴とされるぐらいだから)既に、復古調のちょっと珍しいものになっていたのかもしれない。

 ***この"Illustrious Brotherhood of Our Blessed Lady"というのが、「聖母友の会」らしい→Wikipediaへ