サトクリフのローマン・ブリテン4部作を読み終える

 ローズマリー・サトクリフ『辺境のオオカミ』(岩波少年文庫)読了。

辺境のオオカミ (岩波少年文庫)

辺境のオオカミ (岩波少年文庫)

 hibigenさんの忠告を守って、うっかり「あとがき」を先に目にしてしまうことのないよう、カバーの袖にページを突っこんでから読みました。

 ローマ帝国軍で高い地位にある伯父さんの威光で出世してきた青年アレクシオスが、つい犯してしまった判断ミスから左遷され、遥か北ブリテンの果てで現地氏族民も含めた《辺境のオオカミ》と称される荒くれ軍団を率いることになる。部下をまとめ指揮官の努めを全うするために、大きな犠牲と苦悩を強いられながらも、アレクシオスは異民族を理解し、部下の忠誠をかちとり、新たな居場所を見出す。
 アレクシオスの失ったもの、負った傷は小さなものではないが、彼は年若い独り者であって、自分の軍団と自分の身ひとつだけを考えておれば良いという意味では、迷い少なく清々しい物語である。『ともしびをかかげて』の主人公(アレクシオスの子孫と推定される)アクイラの、家族に対する屈折した感情の翳りを帯びた物語とはそこが異なる。
 氏族たちのさまざまな風習や禁忌の描写、肩に仔猫を載せた若いラッパ手のルーファスや、砦にただ一冊の書物『ゲオルギクス』を読み続けるルシウスなど、記憶に残る人物とモチーフが哀感と共にちりばめられている。撤退を決めた夜、重要書類と共に焼かれることをルシウス自身が望んだ『ゲオルギクス』はどんな書物だったのだろう?…


 これでローマン・ブリテン4部作と呼ばれる作品をいちおう読了。あと少年文庫に入ってるのは『太陽の戦士』『運命の騎士』『王のしるし(上・下)』か…多いやん!いつのまにこんなに(^^;)?


 霧原真さんのサイト『柊館』にある「サトクリフの読み方ガイド」によれば『落日の剣』という作品も4部作に関連があるようなので、ちょっと気になります。とは言っても、サトクリフの歴史小説は多数あるので、とても全部は読めないに決まっているけれど。


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