夢の果ての国で

中野美代子ザナドゥーへの道』(青土社)読了。図書館本。

ザナドゥーへの道

ザナドゥーへの道


 夏休み、涼しい風の入る座敷に寝ころがって(あるいは激しい暑さに朦朧となって)夢うつつで読むのに、これは最適の本。


 あとがきによれば、

本書における「ザナドゥー」は、(...)「西から見た東の場所」であり、「ぜいたくな、あるいは美しい場所」でなくともよいけれども、「手がとどかぬ」あるいは「到達不可能な場所」といった

そんな場所を指しているらしい。時と所を変えながら少しずつつながっている12の連作短篇を通じて、それぞれの登場人物たちは思いがけない運命に押し流されるようにして、あるはずのない国、来るはずのなかった場所にいる自身を見出す。しばしば空間だけでなく、時間も超えて。
 敦煌の蔵経洞で一千年の眠りから醒めた古写本の山に身をかがめるポール・ペリオの姿を思い浮かべると、無数の書物の堆積のなかからこれらの虚実ないまぜの物語をするすると取り出した作者の姿が、そこに重なるような気がする。


 作者も言うとおり、『眠る石』の姉妹編にあたる作品なのだから、これもぜひハルキ文庫に入れて欲しいです…もちろん鈴木一誌装幀で。

眠る石 (ハルキ文庫)

眠る石 (ハルキ文庫)