クワコー的には、こんなものかな

 奥泉光桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』(文藝春秋)読了。

桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活

桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活

 ハハハ。私ほんとはこういうお笑い系?はそれほど好きではなく、奥泉作品でなければ手に取ることもないはずだが、いったん読み始めてみればそれなりに呑気に楽しく読み進めてしまった。*1

 クワコーが登場した前作『モーダルな事象』にひそんでいたような黒さも見られず、つきぬけたような千葉世界(笑)を背景に屈託無き女子大生たちのやりとりがはじけるのを堪能。教師&学生(生徒)ものでほのぼのミステリーという点で、小沼丹『黒いハンカチ』っていうのを読んだのを思い出したり(たぶんぜんぜん違うと思うけど、なにせ全く中身を憶えてない)。

 いちばん印象に残ったのは、《茨城=フランス、ただしパリはない》説。それと、もっとも冴えた行動力と推理力をひらめかせる謎のホームレス女子大生ジンジンこと神野仁美嬢がもっと知りたい。桑潟准教授だってそう思っているはず。残念ながら、他の文芸部員たちなどキャラ全てがはっきり像を結びはしなかったものの、さすがにモンジ&アンドレ森のカップルの行く末は気になります。つか、戦艦「橿原」に乗ってたはずのハゲネズミはこんなところに転生していたのか。

*1:先日の『Fantasy Seller』に入っていた畠中恵の短篇もそういう感じで、読んでみればなんとなくホノボノした世界が拡がっていて気楽な時間が過ごせるのだけど、だからといってそれを自ら進んで読むほどのものか…というと、たぶん読まないのだ。