メネスの祈った神を讃えよ

 途中なのですが、本の後ろへ行くに従ってだんだん長い作品が収録されているようなので、挫折しないか心配。
 最初の方の短い作品は、ランドルフ・カーターの出てくるのではなくてダンセイニ風といわれるような幻想短編です。とても気に入ったのが、「ウルタールの猫」

 
 近所の猫を虐殺しているらしき老夫婦が、たまたま滞在した放浪の民の子供が可愛がっていた猫を手にかけたために、奇怪な呪いにより無惨な遺体となって発見されるという、なんとも爽やかな後味の作品。
 ご近所の猫たちによって復讐が遂げられるというのも美しくて良いではありませんか。猫が深夜に地域集会を開いているという話はよく耳にしますが、実はこのような案件を討議しているのでしょうね。彼らは決して個猫主義なんかではなくて、同胞愛に満ち溢れているのであります。たぶん。
 
 犬猫をひどい目に遭わせる人間に天誅を加えてくれる、こんな神さま(?かどうかは本作からは不明)がいるのなら、私もこの放浪の民の少年メネスのように祈りたいものです。どうか正義をなしたまえ、と。