ソーゼツ?

 栃木リンチ控訴審、捜査怠慢と殺害の因果関係認めず : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 昨晩、この裁判結果のニュースを『報道ステーション』で(画面に背を向けて座って)聴いていたところ、女性アナウンサーの声が、あの言葉を発するのが聞こえた。
  ソーゼツナリンチ
 ソーゼツはおそらく「壮絶」。以前から気になっていたのだ、しばしばマスコミがこの言葉を変な場面で使うのが。例によってYahoo!辞書をひいてみると:

  • そう‐ぜつ【壮絶】 検索辞書:大辞泉

[名・形動]きわめて勇ましく激しいこと。また、そのさま。「―な最期を遂げる」「―な戦い」


 「勇ましい」リンチとは何なのか。
 念のため、【壮】という漢字一字を『角川漢和中辞典』で調べてみても、

【壮】   
さかん。大きい。つよい。わかざかり。三十歳またその前後。いさましい。はやい。
【壮絶】
この上なく盛んなこと。最も壮大なこと。

 となっていて、少なくとも卑劣で酷い犯罪行為にかぶせる形容としてふさわしい要素は何も見あたらない。

 今回判決が報じられた、当の事件を題材とするらしきノンフィクション本の内容紹介文でも・・

内容(「BOOK」データベースより)
一九九九年一二月、栃木県の山林で一九歳少年の惨殺死体が発見された。逮捕されたのは被害者と同じ一九歳の少年三人と一六歳の高校生。少年グループは二カ月間にわたり被害者を監禁し七〇〇万円以上の金を脅し取り、人間の尊厳をも奪う壮絶なリンチをほぼ毎日加えていた。

http://www.amazon.co.jp/%E6%A0%83%E6%9C%A8%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%81%E6%AE%BA%E4%BA%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E2%80%95%E6%AE%BA%E5%AE%B3%E3%82%92%E6%B1%BA%E6%84%8F%E3%81%95%E3%81%9B%E3%81%9F%E8%AD%A6%E5%AF%9F%E3%81%AE%E6%80%A0%E6%85%A2%E3%81%A8%E4%BC%81%E6%A5%AD%E3%81%AE%E4%BF%9D%E8%BA%AB-%E9%BB%92%E6%9C%A8-%E6%98%AD%E9%9B%84/dp/4797498323


 「凄絶」ならまだわかるのよ(もしかしたらそう言ってるつもりで読み間違えてるのか?)。あるいはもっと有り得そうなのは「凄惨」かな。紋切り型ではあるけど。

  • せい‐ぜつ【凄絶】

[名・形動]非常にすさまじいこと。また、そのさま。「―な争い」

  • せい‐さん【凄惨・悽惨】

[名・形動]目をそむけたくなるほどいたましいこと。ひどくむごたらしいこと。また、そのさま。「―をきわめる事故現場」「―な戦い」

 これまた例によって、Google検索↓

壮絶な 凄絶な 凄惨な
リンチ 約 941 件 約 266 件 約 690 件
いじめ 約 667 件 約 58 件 約 1,810 件


 少し違うシチュエーションで、もっとおかしい(笑っては不謹慎だが)のが、ワイドショーや週刊誌の見出しで見かけるパターン化された表現:
"壮絶がん死" - Google 検索
 こんなのもあります:
本田美奈子.さん壮絶死 ZAKZAK
 まぁ、病気との激しく勇ましい闘い、という意味ではあり得なくはないかもしれないが、なんで癌とか白血病で死ぬ場合ばかりが勇ましいことにされがちなのかは不明。

 それはともかく、いじめやリンチ、家庭内暴力その他、「暴力の行使」に「壮絶」という(本来、どちらかといえば戦う勇者への賞賛のニュアンスをこめて使われるものだろうと思われる)形容を加えるのはやめていただきたい、と思う。