すりへる神経


 独りの時間になると、ドラムを叩く(格好だけ。本物ではなく練習用みたいな板を叩いている)主人公リチャード・ギア先日の『カンバセーション…盗聴…』ではジーン・ハックマンがサックスを吹いていた(こちらはわざわざ練習して実際に吹いていたらしい)し、孤独でダーティーな仕事の男は屈託した心を楽器で慰めるというのが定石なのか。なんかちょっとわざとらしい。
 そのジーン・ハックマンが、この映画ではギアのかつての仕事仲間(選挙コンサルタント)。今は独立したギアが華々しく活躍しているのにひきかえ、ハックマンはおそらく古いタイプのコンサルタントらしく、落ち目で酒に溺れている。ギアは、立会い演説会での服装を細かく指示したり、派手なテレビCMで巧みに候補者のイメージを演出する現代的な選挙戦略で成果をあげて次々にクライアントを獲得し、掛け持ちで全米各地を忙しく飛び回る日々。そんな時、長くつきあいのあった上院議員が突然病気を理由に立候補を取り止めると知らせてくる。ほぼ同時に、その後継として出馬する新顔候補のキャンペーンを担当して欲しいと依頼が入るのだが、新顔候補は、引退する前職が情熱を注いでいた環境関連の法案には反対の立場を打ち出していた。納得できない気持ちもありつつビジネスと割り切って引き受けた仕事だったが、前職の引退はほんとうに病気が理由なのか疑惑が浮かぶ。やがてギアの身辺にさまざまな問題が…


 真相に気づいてしまったギアが電話の盗聴に脅かされるという場面もあり、やっぱりこれは『カンバセーション…盗聴…』を意識してるのかしら?環境・エネルギー政策をめぐって石油ビジネスサイドからの工作が入る、というネタは『プリズン・ブレイク』をちょっと連想させた。


 デンゼル・ワシントンが珍しく策謀家で権高な役柄。田舎の保安官とかケチな悪人の役でしか見たおぼえのないJ.T.ウォルシュが、クリーンな新人上院議員候補というスマート(顔もスリム!)なイメージで出ているのも驚き。女の人は、髪形が全員80年代調の爆発したようなカーリーヘアなので見分けがつかない。引退する老上院議員の夫人のしゃべりかたが芝居がかっているのは南部ふう?