外道以下

シオドア・スタージョン『海を失った男』(河出文庫)読了。

海を失った男 (河出文庫)

海を失った男 (河出文庫)

 向いてない、わからない…と言いつつ、往生際の悪い私はまた読んでいるスタージョン。『ロリータ』に続いて若島正ブランドです。前に読んだのは大森望編のスタージョンだったし、こちらを読んでから諦めよう(笑)と思って。
 あいにく「ビアンカの手」はやっぱりよくわからなかったのだけど、表題作「海を失った男」は奇妙に感動的だった。いま一瞬の視覚や痛みがあの場所あの出来事につながるような、多面体の展開図をみるようで、こういう不思議に拡大しまた収束する光景や空間が感じられるような世界が私は好きなのだろう。「成熟」「三の法則」などもけっこう面白く読んだけれど、やっぱり解説にあるようにスタージョンの作品が「人間的」SFなのだとしたら、それこそが私の苦手なところなのだ。“愛”とかぜんぜんよくわからないしね。