- 瀬名秀明『インフルエンザ21世紀』(文春新書)
- 作者: 瀬名秀明,鈴木康夫
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/12
- メディア: 新書
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いまはみんなまだ震災と原発のことで頭がいっぱいだけど、新型インフルエンザだって「いつかは必ず」やってくる災厄として警告され続けてきたものだ。その時、誰がどう対応するべきなのか。私はどうすべきなのか?
2009年に発生したブタ由来インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)を振り返りつつ、インフルエンザはどうやって発生し流行するのかの解説、いろんな方向からインフルエンザを追究し戦っている研究者たちの取り組みを紹介したこの本は、インフルエンザについて少しまとまったことを知りたい“素人”にとっても、読みやすく充実した書物である。(とはいっても、ウィルスが細胞に感染し増殖する仕組みについての解説は、理科音痴にはなかなか難しかったんですけど。分からなくなったらまたその時に読み返すわ)
と同時に、刊行から約2年後のいま読むと、広く「災害論」にも見えてくる。公衆衛生とクライシスコミュニケーションに関する章で、社会心理学者の吉川肇子氏の見解として紹介された
実はパニックが起こることはほとんどない。むしろ「パニックが起こる」と思うことがパニックを起こす
あるいは
「“冷静にしてください”といわれた場合のことを想像してみてください。もしあなたが冷静でも、そういわれたら、自分以外のまわりの人は冷静ではないのかなと思うでしょう。一方でテレビはマスクが売り切れたと報道している。すると、あなたは冷静かもしれないけれど、周りは冷静じゃないですよ、冷静にしているとマスクが手に入らなくて損をしますよ、という、本来の意図とは逆のメッセージが与えられることになります。かえってマッチポンプになっているんです。」
私たちはえてして、自分は冷静に行動しているが他人はそうではない、と思い込みがちだ。(...)
というくだりは、この1年間に起きた論争や騒動、そしてこれからもさまざまな場面で必ず起きるであろう事実隠しや情報操作、風説やデマ、に対してどのように自分の考えを保っていけばいいのかを考えさせられる一節でもあった。