ブッてるのはどなた、言ってるのは誰

 朝日新聞(大阪版?)9月18日付け夕刊文化欄に、
《ずっと「女子」だもん アラサー雑誌・テレビ…おどる造語》
という見出しの記事が載っている。

 近ごろ世間ではやるもの。それは「女子」。雑誌やテレビを見れば「肉食系女子」や「女子飲み」「働く女子」と女子だらけ。(...)「なぜだろう」と考えている私*1も、実は「40代女子」なんですけれど。

 という書き出し。《女性誌に「女子」の見出し花盛り》として具体例も幾つか並べたうえで、「30代女子」「はたらく女子」など、学校にとどまらず会社や居酒屋にまで「女子」という呼称(自称?)が進出してきた現象とその背景を分析している。


 ただし記事にはちゃんと

 もちろん、女子は女の子だけをさすわけではない。「広辞苑(第6版)」でも、<おんなのこ。娘>の後に<おんな。女性。婦人>と続く。女子バレーや女子トイレのように年齢に関係なく使う。

という注釈も入っていて、ネット上などでたまに見かける「30過ぎて女子なんて言うな厚かましい」というような主張とはいちおう一線を画している。


 とは言うものの、

だが、大人の女性というより子どものイメージが先行するのは確か。

として、若さ・可愛さ・「私たち女子だよね〜」という仲間意識への希求が「女子」ブームにはこめられていると分析されているようだ。

NHK放送文化研究所の「女子は何歳ぐらいまでの人に対して使える言葉だと思いますか」という調査に対する回答として、「何歳でもかまわない」との回答は30代、40代女性に多く、10代女子の回答は「高校生まで」が多くなりそうと中間予測した上で)
 「世代でとらえ方が違うんじゃないか。だからきっと、自称女子なんですね」(塩田雄大専任研究員)

「女性は一人前のおとなといったイメージがあるけど、女子というと、甘えた、無責任な、保護されるという感じがする。(...)かわいいことが最大の評価になるから、女子が流行するんですね」(武庫川女子大の佐竹秀雄教授:日本語学)

などの発言を引用しつつ、記事は《そうか!紫式部清少納言の例を出すまでもなく、日本人には「幼くてかわいい」ものを好む美意識が受け継がれている。》と結論づけられている。つまりは、可愛い子ぶるための言葉だ(30代、40代にとっては特に)ということだろう。


 しかし私にとっては、このテの言い方が流行ってるのを知ったのは「メガネ男子」が最初だったし、今さら「女子」のほうをことさら取り上げるのも何だか釈然としない。雑誌の見出しなんかで目立つのは、そもそも良きにつけ悪しきにつけ「女の人のことが語られる」回数のほうが多いし、また流行というものも「女の人」の周りで発生する度合いがずっと高いからに過ぎないわけで*2
 それに昔から「婦女子」「おんなこども」という呼び方でさんざん「女」は「子(供)」とごたまぜにされて来たのに、女が自ら「女子」と言ってみたとたんに「それはいかがなものか」的な取りざたをしたがるのはいったい誰やねん…オッサン臭いデ性別に関わらず…と思ってしまう*3
 もっと言うなら、「男子たるもの…」とか「男子一生の仕事にあらず」とか、果ては男子どころか「○○さん(68歳)は生粋の九州男で…」とまで言って*4、小さい可愛いコ扱いされたがってるのはずっと男のほうだったのではw


 ちなみに、私の言葉感覚にとっては、本来ニュートラルなはずの「女」「おんな」は今となっては文字通りオンナオンナしすぎたニュアンスがこもっているようで、なんの気無しには使いにくい。「女性」は、ふつうに具体的な「女の人」を指して使われることも多いけど、取りようによってはカテゴリーや属性を示しているようでもあって、時に分かりにくい。それに比べると、「女子」は具体的・物理的にそこにいる一人の女の人、個人を指している感じがあって、とくに不都合もない、ふつうに使われて然るべき言葉のように感じられますが何か。
 これからは「おなご」「にょにん」と自称してみるかな…

*1:署名は河合真美江記者

*2:女が語り/流行らせているように見せかけて本当は誰が語り/流行らせてるのかという問題はまた常に別に存在する

*3:ただしこのリンク先ブログのかたのご指摘によれば、河合記者は高橋真琴画伯を熱心に取り上げているようなので、河合記者ご自身は純粋に「カワイイ」をポジティヴに捉えた上でのテーマ提起なんだと思いますが。

*4:京女のことを「京都女児」とは言わない